産後の腹直筋離開

「腹直筋」とは

腹直筋とは、お腹を前から見て、痩せていたり、十分に鍛えられていると見える6つ~8つに分かれる四角い筋肉の総称です。

 

 

この筋肉は身体を前に曲げたり、仰向けで寝ている状態から起き上がる時に使う筋肉です。アウターマッスルと言われています。そのため、お腹を割ろうとするなら、仰向けに寝た状態から起き上がる運動をするのです。

 

また、その反対に脚を上げることでも鍛えることができます。

腹直筋が左右に引き裂かれる!

腹直筋がキレイに6つ並ぶには条件があります。それはお腹がぽっこりとなっていない、ということです。平らなお腹だと脂肪で見えなくてもキレイにならんでいます。

腹直筋離開

ところが、お腹がぽっこりとふくらんだら、キレイに並んではいません。ちょうど風船をふくらますことを想像してください。ふくらます前の風船に絵を書いて、それをふくらませば絵はどうなりますか? ふくらませるとともに伸びてしまいますね。

 

風船だとまんべんなく伸びてふくらみますが、人間のお腹はちょっと違います。まず背中側はほとんど伸びないということです。伸びるのはお腹です。しかも、へそを縦に通る線、つまり中心の線が左右に伸ばされます。

 

ですので、6つに割れる腹直筋の右側の縦に並んだ3つと左側のそれらが離れてしまうのです。

 

そうです! これを「腹直筋離開」と呼ぶのです。

 

「腹直筋離開」は、お腹がカエルにように丸く大きくなった人なら、男女関係なく誰でもそうなる恐れがあります。

 

肥満にせよ、妊娠にせよ、大きくお腹が前にせり出したら、腹直筋が左右に引き伸ばされます。

 

腹直筋離開で起こること

腹直筋離開があると、まず筋骨格系の愁訴が生じることがあります。

 

腰痛などが発生しやすく、腹筋群と背筋群のアンバランスが生じて、治りにくい腰痛となります。

 

産後に腰痛になり、骨盤矯正や背骨を矯正したり、腰部の筋肉をマッサージしたり鍼をしてもなかなか治らない腰痛をお持ちの方は、この腹直筋離開が存在するのかもしれません。

 

また、重度の離開(腹直筋の左右の間すごく開いている状態)があると、腹部臓器のヘルニア(内臓が裂け目から飛び出す)へと進行することもあります。この場合は外科的処置が必要になります。

 

他には、ぽっこりお腹がへっこまない、お腹に力を入れると真ん中が変な形になったり溝ができたりする(または畝のように出っ張る)、いい姿勢を保ちにくい、でべそになったなど、さまざまな影響が出ます。

 

そして、このままほおっておくと、40代以降、更年期などに腰椎すべり症や腰部脊柱管狭窄症などの障害へと進行しやすくなります。

 

腹直筋の状態を知ろう!

腹直筋離開があるかどうかは、自分で検査できます。

 

仰向けに寝て、膝を立てて、おへそをのぞき込むように頭部を上げます。

 

この時、おへその辺りに手の指を横に並べるように添えて、頭を上げたとき、その指が沈み込むかどうかを調べます。横に並べた指が何本沈み込むかで、その重症度を測ります。

 

 

離開があっても心配しないで!

たとえ「腹直筋離開」があったとしても、心配しないでください。

 

ちゃんと離開を戻すエクササイズがあります。

 

焦ってクランチやツイスト、ドローインなど(みなさんが最初に思いつくいわゆる「腹筋運動」と呼ぶ運動など)のような腹筋運動はやめてください。さらに離開を進める場合があります。

 

SNSなどの情報には要注意!

SNS(YouTubeやInstagramなど)には「こうすれば腹直筋離開が治る!」といったエクササイズが紹介されています。

 

よくあるのは「腹直筋を鍛えれば、離開が悪化する!」や「腹横筋を鍛えれば、離開が改善する!」というものです。このアドバイスが一番多く、そして間違っている可能性が高いことは現在の研究が証明しています。これは15年ほど前にアメリカの研究者が発表した内容をそのままコピーして使われているだけなのです。情報発信が容易にできるということは、裏を返せば「デマ」も多く流れやすいということです。

 

ですので、安易に調べて行うエクササイズには危険もはらんでいるということをご承知ください。

 

世界中の論文を検索しても、腹直筋離開に関するものは200本もありません。その中で有用な研究をしているものでも、論文の結びには「さらなる研究が必要である」とあります。これは、まだまだ研究の数が少なく、はっきりとしたエビデンスが得られていないということなのです。研究の現場でもこのような状態ですので、YouTubeなどに有用な情報が流れているとは考えられません。

 

ほとんどが広告費を稼ぐために行われているので、十分に気を付けてください。当院では研究者間でコンセンサスが得られていないもの、つまりエビデンスが十分にないものを発信することはありません。

 

当院ではなぜ研究現場でも不確実なものを改善させられるのか?

研究現場でも、どの筋肉を鍛えればいいのか、どの順番で鍛えればいいのかということにコンセンサスが得られていません。

 

ですが、当院ではなぜ「腹直筋離開」の改善が得られるのでしょうか?

 

それは「筋群の活動性をお一人お一人調べて、個体差、状態を把握してからエクササイズをご提案」するからです。この「状態を把握」することが大切です。

 

みなさんは〇〇運動をすれば「腹直筋離開」が良くなるとお考えでしょう。しかし、同じ運動でも行う状態や時期が違えば、まるっきり正反対の結果となってしまうのです。

 

ですので、可視化しながら確認して、お腹の状態を改善していくのです。

 

ちゃんと専門家の指導を!

このように、一般的にはあまり知られていないマイナートラブルが、産後には多く存在します。

 

腹直筋離開もその一つです。病院でも「〇〇科」と分かれているように、整体や整骨院についても、何でも知っていることはありませんし、何でもできる訳ではありません。

 

腹直筋離開のことを知っている治療家は少なく、それをケアできる治療家はほとんどいません。ですので、たとえ「産後ケア・産後骨盤矯正」と施術メニューに書いてあっても、ちゃんとした知識でケアできるところは皆無ですので、ご相談する際は十分にお気をつけください。

 

もしお困りの場合は当院のスタッフにご相談ください。