産後のコアマッスルの機能低下
インナーとかコアとか、いったい何?
最近、メディアなどでよく「インナーマッスル」や「コアトレーニング」などの言葉がよく見られます。
身体の内部にある筋肉のことを「インナーマッスル」と呼び、体幹の中心(核)となる筋肉を「コアマッスル」と言います。
これらインナーマッスルやコアマッスルは、身体の安定性や姿勢の維持に働きます。運動機能が低い人や高齢になればなるほど、これらの筋群が弱っていることが研究により明らかにされています。※インナーマッスルもコアマッスルも同じ意味になるので、これからはコアマッスルに統一して記載します。
お腹が大きくなると失う機能
妊娠すると数か月であっという間にお腹が大きくなります。
大きくなった腹部の筋肉は引き伸ばされ、収縮しづらい状態になります。もちろん、収縮させると胎児を圧迫しますので、妊婦さんはできるだけ赤ちゃんを圧迫しないように、腹筋群を使わないようにします。
その腹筋群にはコアマッスルが関わっています。
腹横筋です。その他はアウター筋と呼ばれる筋力を発揮して身体を動かす筋群です。
妊娠では呼吸パターンも変わる
妊娠すると腹腔にいる胎児を上から圧迫しないようにします。
具体的には横隔膜を下へ大きく下げないようにするのです。
深く横隔膜呼吸をすると、横隔膜が収縮して下方へさがります。この時に胎児が圧迫されます。
そうしないように、横隔膜呼吸よりも肋間筋呼吸の割合を増やして赤ちゃんを守ります。
大きくなる胎児の重みに負ける
赤ちゃんを支えているのは、骨盤骨やお腹の筋肉だけではありません。
骨盤がバケツとしたら、骨盤は底に穴のあいたバケツといったところです。
ただし、その穴にはハンモックのように筋肉が張っています。
それが骨盤底筋(群)と呼ばれるものです。
骨盤底筋はちょうどの図のようにハンモックになっています。
骨盤底筋が緩んで力が入りにくくなると、尿もれの原因になります。また、腹圧が下方にかかり続けると臓器脱などの障害にもつながります。
最近、お腹にEMSのパッドを貼って腹部をトレーニングすることがあちこちで行われています。
ですが、この骨盤底筋はEMSでは鍛えられない筋肉です。自分で動かすことが特に必要になりますので、お腹だけEMSやレッドコードなどで鍛えても、下手するとアウターが優位になり、その腹圧を骨盤底が受け止められなくなり、骨盤底に臓器が落ちてくることになりかねません。
その他、脊中の細かな動きをコントロールする多裂筋というコアマッスルがあります。
産後はきちんとしたトレーニングを!
産後で困難なのはこの「骨盤底筋」を元に戻すことです。
敏感な場所にある骨盤底筋はEMSでは鍛えることができません。また、レッドコードなどの負荷ではアウターが働いて、骨盤底以上にアウターが腹圧を上げ過ぎることになりかねません。
痩せたからいいトレーニングだという証拠にもなりません。下方に向かう腹圧を作ってしまうと、今は良くても10年、20年後に障害が起こるかもしれないのです。その温床を今、知識がないトレーニングで作らないようにしてください。
「骨盤底筋」は本当に注意してください。
呼吸や腹圧トレーニング、骨盤底筋トレーニングをちゃんと行うことが本当の産後ケアですので、もし産後のお体をちゃんと戻すことをお望みなら、きちんとした知識を持ったセラピストにご相談ください。