産後の腰痛
産後に訴えやすい症状――腰痛
妊娠中から腰痛に悩まされる方は少なくありません。産後はとかく腰を使うことがあります。授乳や抱っこで赤ちゃんを持ち上げる時に、腰の筋肉をかなり使います。それが毎日ですから相当な負担となります。
すると、腰の筋肉が疲労を起こして、痛みを発するようになってきます。前にかがむのが腰が硬くてやりにくくなります。
また、妊娠中に腰の反りがきつくなって、それが産後に戻らずに腰がつまって痛くなることもあります。この場合、腰を反ると痛くなります。椎間関節という場所や棘突起という骨同士がぶつかっているのです。
現代の医学では「機能的腰部障害」は以下のように分類されています。
- 椎間板性
- 椎間関節性
- 仙腸関節性
- 筋・筋膜性
いずれにせよ、姿勢の変化や荷重の変化により、その温床が作られるのです。
産後腰痛の主な原因――腹筋の弱化
では、産後の腰痛は上記のどれに当たるのでしょうか?
答えは、どれも可能性があります。その中でも多いのが「筋・筋膜性の腰痛」です。
動きでは、反って痛い、かがめて痛い、立ち上がる時に痛い、朝起きる時に痛い、抱っこしていて痛い、寝返りで痛い、いつも痛だるいなどさまざまな訴えをお聞きします。しかし、いずれにせよ共通した原因があります。
妊娠中はお腹が大きくなり、体の前後の荷重バランスが崩れます。さらに、赤ちゃんを締め付けないようにするために、腹筋をできるだけ使わないで動くクセができあがります。
すると、腹筋を使わずに背筋を主に使って身体を動かします。例えば、洗面で顔を洗うとき腰をかがめます。この動作をするときに、身体の体幹全体で(腹筋を使って)かがみ姿勢を維持するのです。
ところが、腹筋が弱ると主に背骨の両側にある背筋を使って動くようになります。すると、今までは腹筋が行っていた仕事を、背筋が受け持つことになるのです。そこで背筋が疲労を起こします。背筋の下部は腰にありますので、腰が痛くなるのです。
また、腹筋群が弱くなり、お腹がぽっこり出てしまいます。すると、それに引っ張られて腰が反ります。腰は反り過ぎると、腰の骨の後ろ側がつまります。そこでつまり過ぎて骨と骨が当たって痛みがます。
腰の筋肉の疲労にせよ、腰の骨同士の衝突にせよ、妊娠で腹部の筋肉が弱ってしまい起こることです。
安易に腹部トレーニングをするとぽっこりお腹が治りません
ここまで読むと「腹筋を鍛えればいいんだな」と思うのも無理ありません。ぽっこりお腹になっていることも手伝って、腹筋トレーニングをしている方がいらっしゃいます。
しかし、安易に腹筋トレーニングを行うと、誤った腹筋を鍛えてしまっているかもしれません。そうすると、余計にぽっこりお腹になったり、腰痛を悪化させることになりかねません。
腹部は4層の腹筋が存在します。表層から、
- 腹直筋(たいてい6つに割れて見える)
- 外腹斜筋
- 内腹斜筋
- 腹横筋
この筋群はそれぞれに働きがあります。体を起こしたり捻るのに使う筋、腹圧の調整で使う筋、脊柱起立筋を助けるのに使う筋など、さまざまです。
腰痛を和らげるには、脊柱起立筋の使用頻度を下げなくてはいけません。それは、この腹筋群の中で「脊柱起立筋を助ける筋」を選択的に鍛えなければいけないのです。鍛える順番があります。
さて、まず行うトレーニングは寝転んで起き上がるような、いわゆる「腹筋トレーニング」ではないのです。
クランチと言われる腹直筋を使うような動きはもちろん必要ですが、腹直筋を使う動きは安定化を行う筋の収縮が前提となります。
ですので、腹部運動の基盤ができていないうちから、厳しいトレーニングや腹直筋のようなアウタートレーニングを行うと、腹部はポッコリからなかなか治らないことになりかねません。
ですので、産後の腹部トレーニングは、人の体を「産後×運動」の両面からちゃんと理解している専門家にご相談ください。