通常であれば、産後の悪露は1か月ほどで止まります。産後に気血水の「気血」が非常に弱くなり、下腹部の失調が起こります。すると、東洋医学的な考え方の「固摂機能」が働かなくなり、1か月を超えてもぽたぽたと悪露が止まらなくなります。 また、瘀血が存在すると、その瘀血が邪魔になり新しい血が本来の場所で流れることができないために、悪露となり出てくるのです。 この場合、気虚、瘀血、そして肝腎を補う治療を行います。 また、治療と並行して子宮回復と固摂機能の促進、内臓下垂の予防を腹帯を工夫して行います。
妊娠前は排便に関して問題なかったのに、妊娠中や出産後に便秘になってしまうことがあります。 これは出産により「気血水」が急に虚して、特に「水」が虚してしまうと、腸が乾燥してしまい、便を送り出すことができなくなります。 軽いものは食事療法で良くなります。治りが悪いものは、腸を潤すような治療を施します。産後は気血の力がなくなって潤せないので、気血を充実させて腸を潤すように治療します。
「産後から手や足の先がしびれている」「寝起きにしびれが気になる」という症状でお困りの方がいらっしゃいます。 もしか神経が悪くなったのでは?と整形外科で画像の検査をする方がいらっしゃいますが、100%何も悪いところは指摘されません。 これは出産で血を損傷したために、四肢末端まで血で栄養されることができなくなった状態なのです。 血が栄養する優先順位というものがあります。脳は阻血するとすぐにダメになるので、まずは脳を栄養します。それから重要な内臓です。四肢末端の先にある筋肉や組織を栄養するのは後回しです。ですので、産後は血が不足して末端の栄養不足となるために「しびれ」を感じるのです。 この治療は血流をよくするだけのビタミン剤では不足します。出産で血を失って、新しい血を作るのが間に合わないのですから、血を増やす治療をします。
「別に暑いわけではないのに汗がでる」「寝汗がひどい」 こういったことが産後に起こることがあります。東洋医学では、体内の物質を出入りさせるのも気が関わっているのです。体内の水分の調整も「気」が行っていて、産後にはその「気」がかなり減少して、「気虚」という状態になっています。 すると、体の水分調整、特に汗の調整をしている「衛気」と呼ばれる気の力が弱くなり、暑くなくても汗が体外に漏れ出してしまうのです。 治療は汗を止めるといった表面的なものではなく、体内の水分を留めておけない「気」の力を増やす治療になります。
産後は気血を大変消耗します。下血が多かったり、産後に十分休まず動きすぎたりすると新しく体内で血を作っても消費に追いつきません。消耗した血はお腹の臓器、特に「肝」と「胞宮(子宮)」を栄養できなくなり腹痛が起こるのです。 この場合、休養と気血を補う治療が必要になります。
産後に寝られないという状態はよくあります。これは赤ちゃんのせいで眠れないのかと思い込んで、多くの方が「そんなもの」と思っていらっしゃるようです。しかし、熟睡感がなかったり、日中ぼんやりしたり、情緒が不安定になったり、思い悩んだり、悲観してしまうという病状が表れると安眠できていないのです。 産後に眠れなくなるのは、出産で急激に血を失って、体を栄養する血が不足し、特に「心」を栄養する血が不足すると、虚火が燃え上がり眠れなくなります。 また、出産後は「腎」が弱くなり、「心」との関係がうまくいかなくなると、先ほどの「心」に虚火が発生します。「腎」が弱くなると、腰がだるくなったり、耳鳴りが起こったりします。 この場合、気血水を補い、虚火を潤して、営血(体を栄養する血)を増やす治療を行います。
腰痛は産後で最多の訴えです。骨盤矯正を受けてもいまいち治らないという方がその中でも一定数いらっしゃいます。 東洋医学では、出産で「腎」が弱り、「腎」は「子宮」とつながっていて、出産時にそれらの臓腑がダメージを受ければ、それらが弱ってしまい、その時に少しでも冷えたりすると栄養されなくなり「だるさ」を感じるようになるのです。 この治療としては「腎」の気をとにかく増やす治療です。「腎」の損傷により、尿量が増加したり、やたらと足が冷えたり、人によって随伴する症状は異なりますが、根本的に治療するのは「腎」を正常に戻すことです。